セリフ 35


 
女「平泉は、この村の北にあります」
女「あなたたちの旅が、しあわせなものでありますように」
男「いくら、鬼ババをふせぐためっていっても、みちまでふさがれちゃこまるよなあ」
男「鬼ババもいなくなったし、これであんしんして、平泉に行けるよ」
子ども「鬼ババなんて、こわくないやい…………ちょっとしか」
うめ「法輪さん、はやくかえってきてね!」
男「この村の北西に、かくしどうくつがあるらしいんだけどね。
そこの、たいまつのどれかに、神さまがかくれているんだってさ」



すけろく「わたしは、まちいちばんのけんのうでを持っている。
金300で仲間に入るが、どうだ?」
仲間にしますか?
すけろく「ざんねんだ……」
すけろく「わたしにまかせておけ」
すけろくが仲間になった!
すけろく「仲間がいっぱいのようだな。ざんねんだ……」
すけろく「さきだつものがないようだな。ざんねんだ……」



男「この近くには、人を食う鬼ババがいるんだ。気をつけろよ」
男「鬼ババは、どこかの旅の人がやっつけたんだって」
しそべえ「いらっしゃい。うちの酒はうまいよ……って、
あんた、まだ、こどもじゃないか。帰った、帰った」
しそべえ「いらっしゃい。うちの酒はうまいよ……って、
あんた、まだ、こどもじゃないか。帰った、帰った」
北斗丸「自分で、のむんじゃないんです。
となりの法輪さんに、たのまれて……」
しそべえ「なんだ、あの坊主か。あいつ、いつも酒ばっかりのんでてさ。
お経あげてるのなんて、見たことないぜ。あきれたヤツだろう?」
頼遠「まったくだ」
しそべえ「あれでもむかしは、法力の強いえらい坊さんだったそうだが……信じられないね」
うめ「ダメよ、おとっつぁん。法輪さんの悪口、いわないで。
あたいには、とってもやさしいんだから」
しそべえ「わかったよ、うめ。じゃあ、いつものように、とどけておくれ」
うめ「は−い」
北斗丸「あ、お金は……」
しそべえ「わかってるよ、ツケだろ。まったく、もう」
うめ「じゃあ行きましょ、お兄ちゃんたち」



うめ「法輪さん、お待たせ−−−!」
法輪「おお、うめか。いつもすまんな。そこの二人も、ありがとな。
まだ名前も聞いとらんかったな?」
北斗丸「北斗丸です」
頼遠「源頼遠だ」
法輪「源だと……?源氏の人間なのか?」
頼遠「そうだ。それが、どうかしたか」
法輪「わしは源氏がきらいじゃ。
やくそくしたから、とめてやるが、あしたの朝早く帰ってくれ」
北斗丸「ええっ!?ど、どうして、いきなり?」
頼遠「源氏をきらうとは……おまえ、平家の生きのこりか?」
法輪「源氏も平家も、きらいじゃい!
むかし、源氏と平家のいくさで、たくさんの人が死んだからじゃよ」
うめ「法輪さん!」
法輪「うめ、早く帰りなさい。今日は遊んでやれないよ」
うめ「でも……」
法輪「うめ!」
うめ「………はい」
頼遠「勝手なヤツだな。かいものにまで、行かせておいて」
北斗丸「ま、待ってください!源氏の人たちは、みんないい人ですよ」
法輪「やかましい、聞きたくないわい!」
北斗丸「聞いてください、法輪さん。
この頼遠は、すて子だったオレをひろってくれたんです。
それに今だって、妖怪にさらわれた姫を助けようと……」
頼遠「やめろよ、北斗丸。オレなら平気だからさ」
北斗丸「頼遠……」


それから、しばらくの時がながれた


しそべえ「うちのうめは、おじゃましてないかね?」
頼遠「いいや」
しそべえ「ああ、やっぱり。どうしよう、大変なことになった……」
北斗丸「うめちゃんが、どうかしたんですか?」
しそべえ「もう、くらくなるというのに、まだ帰ってこないんだ。
北の原っぱに行くのを、見たって人がいるし……ああ、どうしたらいいんだ」
法輪「なんじゃと!?
北の原っぱといえば人を食う鬼ババが出るといってだれも近づかんのだぞ!」
北斗丸「ええっ、それは大変だ!早く、助けに行かなくちゃ!」
しそべえ「おねがいします!」
頼遠「よし、坊さんも来てくれ」
法輪「えっ、わし?」
頼遠「あんたの法力がひつようになることもあるだろう」
法輪「……いやあ、わしなんて………」
しそべえ「おねがいだ、法輪さん。うめを助けてください」
法輪「い、いや……あのな、わしなんてじゃまになるだけじゃと思うぞ。
うん、きっとそうだ」
北斗丸「なにをいってるんですか!
今ごろ、うめちゃんは大変なことになっているかもしれないんですよ」
法輪「うん、だから……わしのことは気にせず、
行ってやったらいいんじゃないかの……」
しそべえ「そんな、法輪さん」
頼遠「あの子は、あんなにあんたをしたっていたじゃないか。
それなのに、見すてるのか!?」
法輪「…………」
北斗丸「いくさで、つみもない人が死んだことを、
あんなにおこっていたのに………
うめちゃんを、見殺しにするっていうんですか!?」
法輪「………わしには、むりなんじゃ………なんといわれても、むりなんじゃ」
しそべえ「…………」
頼遠「…………」
北斗丸「……もう、いいです。オレ、あなたを見そこないました。
うめちゃんは、オレが助けます!!」
頼遠「北斗丸!」



頼遠「……こわいのは、しょうがない。
オレだって……たぶん、北斗丸だってこわいと思っているんだ。
けど、それでも、立ちむかわなければいけないときがあるんだ………
あんた、本当にこれでいいのか?」
法輪「…………」
頼遠「………わかった」
しそべえ「そうだ、うめがいってたんですけど、
この村の北西に、原っぱに通じるどうくつを見つけたらしいんです。
ひょっとしたら、そこを通ったかも…では、よろしくおねがいしますよ」



しそべえ「うめを見つけてください。北西の山にどうくつがあるはずです」


しそべえ「うめを助けてくださって、本当にありがとうございました」
うめ「早く帰って来てね」