阿古耶「わあ、大きなたき。それに、きれいな水だね。 ちょっと、水あびしちゃおうかな」 北斗丸「ダメだよ。こんなところでそうびをぬいだら、妖怪におそわれたとき大変だぞ」 法輪「北斗丸………おまえさん、ほんっと−−−にマジメでつまらんヤツじゃのう」 北斗丸「たまおり姫が引きずりこまれたとどろのたきっていうのは、ここだな」 阿古耶「こんなにきれいな水なのに、妖怪が住んでいるなんて……」 頼遠「二人とも、そんなにのぞきこんじゃ、あぶないぞ」 北斗丸「な、なんだ!?」 法輪「おおっ、す、水上を見てみるんじゃ!」 ヌシ「わたしの住みかでさわいでいるのは、だれじゃ?」 阿古耶「出たわね、妖怪!」 北斗丸「オレたちは、おまえにさらわれたたまおり姫を、助けに来たんだ! おとなしく、姫を返せ!」 ヌシ「いやじゃ。姫は返さぬ」 北斗丸「それなら、戦って取りもどす。かくごしろ!」 ヌシ「なまいきな!」 ヌシ「む、むねんじゃ……」 北斗丸「さあ、たまおり姫を返せ!」 たまおり姫「待ってください!」 たまおり姫「ヌシさまを、いじめないでください」 火鷹「あんた、なにものだ?」 頼遠「あなたの、そのかっこう………さぞ、名のある姫ぎみと見受けるが?」 たまおり姫「わたくしは、たまおり姫。 あなたがたは、わたしの父に頼まれて来た方たちでしょう」 北斗丸「そうです。おとうさんはとても、心配していましたよ」 たまおり姫「そうですか………ありがとうございます。でも、わたくしは帰りません」 阿古耶「ど、どうして!?」 たまおり姫「それは………ヌシさまをあいしてしまったからです。 はじめはこわかったけれど、ヌシさまは、とてもやさしくしてくれました。 わたくしは、ヌシさまのそばをはなれたくありません。 父たちに、そう伝えてください」 法輪「こりゃあ、たまげたわい」 北斗丸「こ、こんなことになってるなんて……」 ヌシ「わたしも、たまおり姫をあいしておる。 どうか、わたしたちを引きはなさないでほしい」 頼遠「どうする、北斗丸?」 たまおり姫を、連れて帰りますか? 北斗丸「……やっぱり、好きあっているものを引きさくのは、よくないことだと思うよ」 たまおり姫「そ、それじゃあ?」 北斗丸「おとうさんたちにはオレから、いっておきます………二人で、おしあわせに」 阿古耶「さすが、北斗丸!」 火鷹「フッ……ガキのくせに、なかなかシャレたまね、するじゃねえか。 ガチガチ頭の頼遠よりも、ずっとイキだぜ」 ヌシ「ありがとう。おれいに、そなたたちを元気にしてやろう」 みんなは、元気になった! たまおり姫「わたくしからは、これを……」 たまおり姫「これは、わたくしのかんざしです。 これを母にわたして、わたくしは元気ですと伝えてください」 北斗丸「はい、わかりました」 『きんのかんざし』を、手に入れた! ヌシ「では、元気でな。そなたたちのことはわすれないぞ」 たまおり姫「ありがとうございました」 北斗丸「……でも、姫を連れて帰るってやくそくしたんだ」 たまおり姫「そ、そんな……」 法輪「ウム、妖怪といっしょになっても、しあわせになれるとは、かぎらんからのう」 たまおり姫「ああ、ヌシさま……」 ヌシ「姫よ……………わたしでは、かれらに勝てぬ。 かれらが、そなたを連れていくというのなら、それをとめることは、できないのだ」 阿古耶「なんだか、かわいそうみたい」 頼遠「しょうがないさ。妖怪と人間では、住む世界がちがうんだ」 北斗丸「たまおり姫、さあ、こちらへ」 たまおり姫「…………」 ヌシ「姫………元気でな」 たまおり姫「ヌシさま、今度生まれかわったら…………そのときは、かならず……」 阿古耶「本当に、これでよかったの?」 北斗丸「しょうがないじゃないか。さあ、帰ろう」 北斗丸「たきのヌシさんたち、元気かな」 阿古耶「たきのヌシには、悪いことをしたね」 北斗丸「あっ、あれは!?」 頼遠「大ガマだ!あんなヤツが、家の地下に、かくれていたなんて」 法輪「そういえば、ゆか下に大ガマが住みつくと、生気をぬかれる………と聞いたことがあるわい」 北斗丸「あっ、火の玉を食べたぞ!あれは、おばあさんから出た火の玉だ」 頼遠「きっと、あの火の玉は、おばあさんの生気なんだな。 それを食べられたからびょうきになったんだろう」 北斗丸「なんてヤツだ、ゆるせない!」 大ガマに、おそいかかった! 北斗丸「大ガマもやっつけたし、帰ろう」 |