義経「………おまえたち、人間だな。どうやって、ここまで来た」 北斗丸「弁慶さんに、教えてもらったんだ!」 義経「弁慶?弁慶が、おまえをつかわしただと?………して、なんの用だ」 北斗丸「人間をおそうのを、やめてほしいんだ」 義経「そうはいかん………オレは、人間にふくしゅうしてやるのだ。 オレたちをうらぎった人間にな!」 頼遠「あんたをうらぎったのは、頼朝だろう! 他の人間には、つみはないはずだ」 義経「オレは、人間ぜんぶにいやけがさしたのさ。 こんないやらしい生きものは、みんな死んでしまった方がいいんだ」 北斗丸「そ、そんなことない! 人間にも妖怪にも、いいヤツはいっぱいいるんだ。 みんな、仲よくやっていけるよ!」 義経「ええい、うるさいヤツめ。その口、ふさいでくれる!」 義経が、おそってきた! 北斗丸「と……とうさん!」 頼遠「あっ、北斗丸!」 義経「な、なに………とうさんだと……?おまえは、オレのこどもか?」 北斗丸「はい。とうさんのこどもの、北斗丸です」 義経「そうか……おまえが、オレの………だから弁慶は、おまえをつかわしたのか……… たくましく、そだってくれてうれしいぞ………北斗丸」 北斗丸「とうさん……」 義経「グ、グホッ!」 北斗丸「ど……どうしたんだ、とうさん!」 義経「ぬ、ぬらりひょんめ……… いつのまにか、オレに術をかけていたらしい………」 北斗丸「なんだって!」 義経「いいか……よく聞け、北斗丸。この体は、もうオレのものではない…… 取り返しのつかないことになる前に、おねがいだ………とどめをさしてくれ………」 北斗丸「そ、そんな………できないよ、そんなこと!」 義経「やるんだ!このままでは、オレはおまえを殺してしまう……」 北斗丸「できないよ、とうさん………」 義経「バカめ……… それなら、オレがおかしくなる前ににげてくれ……にげて………グワァッ!」 義経「グワアア−−−ッ!!」 北斗丸「と、とうさ−−−ん!」 頼遠「北斗丸、あぶない!」 義経が転身して、おそってきた!! 義経「う、うう………北斗丸、ぶじか………?」 北斗丸「だ……だいじょうぶだよ、とうさん」 義経「………それならいい………オレは、もうダメだ」 北斗丸「と、とうさん………ごめんなさい」 義経「なぜ、あやまるのだ。おまえのしたことは、正しいことだぞ……… それに、オレはうれしいのさ。 正気をなくす前に、実のこどもの手で死ねるのだからな………」 北斗丸「…………」 義経「……めいわくをかけたな、みんな…… 兄上のむごいしうちに、こうぎするはずだったのに……… ぬらりひょんなどにあやつられ、いつのまにか、ヤツの思い通りにうごいていたのだな……… すまなかった、北斗丸」 北斗丸「そ、そんなこと……」 義経「めいわくのかけついでに、一つたのみがある………聞いてくれるか?」 北斗丸「は……はい!」 義経「……兄上を、とめてくれ……… 今のままでは、人間と仲よくしている妖怪まで、みんな殺されてしまう…… その前に、兄上の目をさましてくれ。たのむ………」 北斗丸「はい、わかりました!」 義経「……ありがとう、わが子よ………………さらばだ………」 北斗丸「とうさん!」 北斗丸「……さよなら、とうさん………」 阿古耶「北斗丸………」 北斗丸「みんな、鎌倉へ行こう。とうさんとのやくそくをはたさなきゃ」 火鷹「……ああ」 阿古耶「……そうだね。鎌倉で、すべてがおわるんだ!」 弁慶「北斗丸さま、義経さまは………?」 北斗丸「そ、それが………」 北斗丸は、弁慶にすべてを話した 弁慶「………そうですか。 さいごに北斗丸さまに会えて、義経さまも、きっとうれしかったでしょうね………」 法輪「そうですな。おだやかな、いい顔をしていましたぞい」 弁慶「…………よかった……」 北斗丸「弁慶さん………」 阿古耶「ないてるの、弁慶さん?」 頼遠「シッ、阿古耶。弁慶さんにとって、義経どのはとても大切な人だったんだよ……」 弁慶「い、いや、お見苦しいところを見せましたな……… それでは、鎌倉までおくりましょう。 義経さまのためにも、がんばってください」 北斗丸「はい!」 法輪「よ−し、出発じゃい!」 景時「ようやく、さいごの妖怪をやっつけました。 これで、鎌倉の妖怪は、みな殺しになったはずです」 頼朝「ウム、ごくろうであった。では、よその妖怪に取りかかるように」 景時「はい。しかし、こう町の数がおおくては、わたしたちだけでは………」 頼朝「わかった、かんがえておこう。さがってよい」 頼朝「フッフッフ………妖怪どもめ、待っているがいい。 もうすぐ、一ぴきのこらずやっつけてやるぞ。 このわし、鬼追うものの頭目、頼朝がな………」 弁慶「さあ、ここまで来れば、鎌倉はすぐそこです。 本当ならば、もっと近くまで行きたいのですが……… てんぐのわしが行けば、大さわぎになるに決まっていますからな」 北斗丸「ここまでで、じゅうぶんです。ありがとう、みなさん」 弁慶「では、おねがいします。人間と妖怪が、仲よくやってゆくために……… がんばってください、北斗丸さま。あなた方に、この国のみらいをたくします」 北斗丸「はい、まかせてください!」 |