牛頭「やっと、見つけたぜ!」 馬頭「今度こそ、にがさねえ!」 義仲「牛頭と馬頭だ!」 北斗丸「しまった、おいつかれたか」 牛頭「さんざん、好き勝手をしてくれたな。だが、今度はそうはいかねえぞ」 馬頭「ああ、そうだとも。 とっつかまえて、えいきゅうにこの国から、出られないようにしてやるからな!」 牛頭と馬頭が、おそってきた! 頼遠「しぶといヤツだったな………」 義仲「グズグズしては、いられんぞ! 牛頭と馬頭のあとを追って、他のヤツらも来るにちがいない。 その前に、早く霊鏡のところに行くのだ!」 巴「さあ、早く。霊鏡は、このおくにあります」 巴「あら、『くさなぎのつるぎ』は、いらないんですか? ここの、一番上にあるんですよ」 義仲「オレたちが行けるのは、ここまでだ」 巴「死んだわたしたちには、この鏡を通りぬける力がないのです。 むりに行こうとすれば、力を使いはたしてしまうでしょう」 阿古耶「そうしたら、どうなるの?」 義仲「さあな。さまようたましいとなるか、チリとなって消えるか………」 阿古耶「そ、そんなぁ」 巴「そんなことより、お別れの前に、聞いてほしいことがあるのです…… どうか、頼朝には、気をゆるさないでください」 法輪「ど、どういうことですかな?」 義仲「頼朝と義経、それにオレたち源氏には、鬼追うものの血がながれているのだ」 北斗丸「鬼追うものの血?たしか、アメノミカゲもそんなことをいっていた………」 義仲「鬼追うものとは、妖怪退治のさだめを持つ一族のことだ。 オレたちはむかしから、悪い妖怪から人間を助けてきたんだよ……… 頼朝が、力を持つまでは」 巴「頼朝は、源氏の頭目として力を手に入れると、つぎつぎに妖怪をやっつけていきました。 それが人に悪さをしない、いい妖怪であっても、おかまいなしに……… はじめは、それでも頼朝のいう通りにしていたのです………」 義仲「しかし、ヤツのやりくちはあまりにもひどすぎた。 だからオレと義経は、ヤツに意見をしに行ったのだ………」 義経「兄上、見さかいない妖怪退治は、もうやめてください。 妖怪の中には人間と仲よくやって行こうという、やさしいものもいるのです」 義仲「オレも、同意見だ。 こんなことをつづけていたら、源氏はあらゆる妖怪を敵にまわしちまうぞ」 義経「兄上、おねがいです!」 頼朝「……フッ、なにをバカなことを。 妖怪など、世の中をみだすだけのそんざいではないか。 くだらないことをいわず、早く妖怪どもをみな殺しにして来い」 義経「兄上!なぜ、わかってくれないのですか? 妖怪と人間は、仲よくやって行けるんですよ」 頼朝「しつこいぞ………そういえば、おまえの部下の弁慶とやら………ヤツは妖怪だそうな。 鬼追うもののおまえが、妖怪など部下にしていては、他のものにしめしがつかん」 義経「兄上、まさか………」 頼朝「義経、弁慶を殺せ。できなければ、おまえをうらぎりものと見なす」 義経「な……なんてことを!弁慶は大切な仲間です。殺すなんてできません!」 義仲「そうだ、ムチャをいうな!悪い妖怪を倒すのが、オレたちのしごとだ。 いい妖怪を殺せるわけ、ないだろう」 頼朝「フッフッフッ………とうとう、しっぽを出したか。 おまえらは、やっぱり妖怪と手をむすんだ、うらぎりものだったのだな。 そこまでヤツらをかばうのが、なによりのしょうこだ」 義経「兄上!?」 頼朝「だまれ!もう今日からは、おまえを弟とは思わぬ。 義仲とともに、あの世で妖怪どもがみな殺しになるのを、見ているがいい!」 頼朝「こいつらは、妖怪にたましいをうった、うらぎりものだ!たたき切ってしまえ!」 さむらい「おうっ!」 義経「兄上!これが、あなたのために、はたらいて来たものへの、しうちですか? 本当にオレたちが、あなたをうらぎったと思うのですか!?」 義仲「やめろ義経、ムダだ。それより、にげるぞ!」 義経「しかし……っ」 義仲「いいから、来い!」 頼朝「ヤツらをにがすな!!」 義仲「………しばらくして、オレたちは頼朝の追っ手に殺されたのだ」 頼遠「そんなことが、あったなんて……」 巴「あなたたちが、頼朝のために『三種の神器』を探しているのだとしたら、気をつけてください。 頼朝はきっと、神器によって手に入れた力で、妖怪をみな殺しにしようとするでしょう。 くれぐれも、頼朝には気をつけて」 巴「では、元気でね。わたしたちのいったことをわすれないで」 北斗丸「は……はい。お世話になりました」 阿古耶「気をつけてね!」 巴「ありがとう………あなたたちが、この国に来るのがなるべく、おそくなりますように」 義仲「用意はいいか、巴」 巴「ええ。ひさしぶりに、ひとあばれしましょう!」 義仲「われこそは、木曽義仲なり!ザコども!かかってこい!!」 法輪「あいたたた………こ、こしをうった……」 阿古耶「ここ、黄泉の国じゃないよね?あたしたち、助かったんだ」 火鷹「そうらしいな」 頼遠「しかし、ここはどこなんだ?」 声「北斗丸………北斗丸………」 北斗丸「あっ、この声は!」 声「ぶじに、にげられたようですね………よかった………」 阿古耶「ここは、どこなんですか?」 声「ふじ山のふもとにある、樹海です……もう、ひとがんばりですよ…」 法輪「それはいいんじゃが……… イテテ、わしはさっき、こしをうってしまってのう………うごけそうにないのじゃ」 声「それでは、わたしが治してあげましょう………他のみなさんも………」 みんなは、元気になった! 法輪「おお、ありがたい。これで、あんしんじゃ」 声「では、がんばってね………わたしは、いつでも見守っていますよ………」 めいほうさんを手に入れた! からっぽです! 鬼「あっ!あんたたちは、ろうごくをにげだした、生きた人間だね。 いいこと教えてあげるから、いじめないで! もし、ぼくとうを持ってたら、この社の東にある大木のところへいってごらん。 でも、ぼくとうはそうびしちゃダメだぜ。じゃあね−−−!」 ふしぎな光をあびて元気になった! 少年「やくそくを、やぶるでないぞ」 女官「早く、行け!」 女官「おうじのお心、むだにするでないぞ」 少年「そなたたちは、だれ?」 北斗丸「北斗丸といいます。 そこの、『くさなぎのつるぎ』を手に入れるために来ました」 女官「なに、『くさなぎのつるぎ』じゃと?さては、おぬしら源氏のものじゃな!」 女官「こんなところまで来るとは、なんとしつこいヤツじゃ。 源氏などにわたしたら、『くさなぎのつるぎ』がけがれるわ。下がれ!」 北斗丸「ちょっと、待ってください。 たしかにオレたちは、源氏の人間ですけど、 『くさなぎのつるぎ』は世の中を平和にするためにひつようなんです!」 少年「平和のため………?」 女官「だまれ!源氏のいうことなど、信じられぬ。帰れ!」 女官「帰らぬと、こうじゃ!」 女官が、おそってきた! 少年「やめよ!」 女官「でも………」 少年「わたしにさからうことは、ゆるさぬ。その人たちと、戦ってはならぬぞ」 女官「…………はい」 少年「ケガは、ないか?」 北斗丸「はい、ありがとうございます」 少年「わたしは、だんのうらの戦いで死んだ平家のおうじだ。 『くさなぎのつるぎ』は、わたしといっしょに海にしずみ、黄泉の国に来た。 ずっとこの国におくつもりでいたが、平和のためなら、そなたにあげてもよい」 女官「そ、そんな!」 少年「平和の大切さは、身にしみてわかっているつもりだ………… ただし、かならず平和に役立ててほしい。やくそくできるか………?」 北斗丸「はい!」 少年「よし、受け取るがよい」 『三種の神器』のひとつ、『くさなぎのつるぎ』を手に入れた! 少年「わすれるな。『三種の神器』は、三つそろえると、 とてつもない力を手に入れることができる。 その力、平和のためいがいに、使ってはならぬぞ」 北斗丸「はい、やくそくします」 |