阿古耶「みんな、あそこを見て!」 北斗丸「あれは、まさか………人魚?」 北斗丸「あ、あの……」 人魚「あなた、こおりの花持ってるか?」 阿古耶「えっ、こおりの花?」 人魚「そう、こおりの花。とてもきれいな花ね」 北斗丸「あ……ごめんなさい、持ってません」 人魚「そうか……やっぱりこおりの花、えぞにしかない花ね」 頼遠「えぞだって?」 人魚「わたし、こおりの花ほしい。頭にかざって、きれいになりたいね」 法輪「今のままでも、じゅうぶんベッピンさんじゃがなあ……」 人魚「まだダメね。もっと、きれいになりたいね。 人魚にとって、うつくしさ一番大切あなたこおりの花取って来てほしいね」 北斗丸「えっ、オレたちが?」 人魚「わたし、力持ち。あなたたち、えぞに連れて行くね。 だから、あなたこおりの花取って来てほしいね」 法輪「これは、ちょうどいいかもしれんな引き受ければ、海のむこうのえぞに行けるぞい」 阿古耶「そしたら、えぞの『天下五剣』が探せるね!」 人魚「こおりの花あれば、わたし一番きれいおねがいね」 頼遠「どうする?」 人魚のたのみを、引き受けますか? 北斗丸「ごめんなさい。また今度、時間のあるときに……」 人魚「そうか、ガッカリね」 人魚「えぞのこおりの花、取って来てくれるか?」 人魚のたのみを、引き受けますか? 北斗丸「いいですよ、引き受けましょう」 人魚「ありがとね、ありがとね!あなた、いい人。ちょっと待ってるね」 人魚「さあ、これにのるね。早くこおりの花、取りに行くね」 人魚「やあ、またえぞへ行くか?」 人魚におくってもらいますか? 人魚「えぞへ行きたい時はいつでもこえをかけるいい」 北斗丸「あれ?人魚さん、いないなあ」 阿古耶「そりゃそうよ。 あたしたちが勝手に帰って来ちゃったこと、知らないんだもん。 きっとまだ、えぞで待ってるんだよ」 人魚「わたし行けるの、ここまでね。ここで待ってるから、こおりの花よろしくね」 北斗丸「はい、かならず取って来ます」 人魚「花畑どこにあるか、わたし知らないね。 でも、人間なら知ってる。あなた、そこの村で聞いてみるね」 法輪「おお、そうじゃな」 人魚「わたし待ってるね。がんばるね」 北斗丸「はい、まかせてください」 人魚「どこ行くか。こおりの花取りに行くやくそくね」 北斗丸「むこうに見えるのは、なんだい?」 頼遠「ああ、あれは四国だ」 タヌキ「まったく、まわりみちなんかして………今度こそ、キツネをやっつけてくださいよ」 タヌキ「さあ、のってください」 阿古耶「やっぱり、生あたたかくて、気持ち悪い………」 タヌキ「じゃあ、出発しま−す」 女「うう………く、くるしい」 北斗丸「どうしたんですか?」 女「うう………急に、おなかが………いたたた」 法輪「しっかりしなされ。どれ、見てしんぜよう」 北斗丸「だいじょうぶですか?」 女「ワッハッハ……だまされおって、バカめ!」 女が正体をあらわし、おそってきた! タヌキ「ありゃりゃ、もうおわりッスか?」 北斗丸「………………」 タヌキ「気をうしなってるッスよ………あ−あ、ガッカリ。ほかの人間を探さなきゃ」 主人「おきてください。いつまで、ねてるんです」 北斗丸「う、う−ん……」 法輪「あいたた……」 頼遠「ここは、どこだ? たしかオレたちは、女にばけたばけダヌキにやられたはずなのに」 主人「わたしのやどやですよ。 きのう、知らない女の人が、気ぜつしたあんたたちを、連れて来たんです」 北斗丸「あのタヌキかな?」 法輪「あいつは、わしらをおそったんじゃぞ。 なんで、わざわざやどやに連れて来てくれるんじゃ?」 北斗丸「それは、わからないけど……」 主人「ちょっと、そんなとこで話しこまないで! さっさとしたくして、帰ってください」 北斗丸「あ……はい」 タヌキ「ま、まいった−−−!」 阿古耶「なにが、まいったよ!そっちから、しかけてきたクセに」 タヌキ「ごめんなさいッス。これには、ふか−−−いわけがあるんス」 北斗丸「ふかいわけって?」 タヌキ「実は、強い人間を探すため、しょうがなくやったんス。 でも、やっと見つけたッス。おねがいッス、話を聞いてください」 北斗丸「うん、別にいいけど………?」 タヌキ「話せば長いことながら、オイラは四国のタヌキなんス。 もともと、タヌキとキツネって仲が悪いんスけど……… 近ごろ、キツネたちが強くなって、オイラたちタヌキが、やられそうなんスよね」 阿古耶「キツネもタヌキも、同じようなもんじゃないの」 タヌキ「じょうだんじゃ、ないッス! オイラたちは山の中に住んで、人間にめいわくをかけないように気をつけてるッス。 でも、キツネのヤツらは畑をあらしたり、食べものをぬすんだり、ひどいんス」 頼遠「たしかに、それはひどいな」 タヌキ「なにより悪いのは、人間たちは、そのおじょうさんと同じで、 キツネもタヌキも同じだって思ってるんス。 でも、なにもしてないオイラたちまで畑をあらしたように思われるなんて、あんまりッス」 阿古耶「そりゃ、そうだよね。ごめんね」 タヌキ「いいッス。それでオイラ、強い人間にたのんで 、キツネをやっつけてもらおうと思ったんス………」 北斗丸「そうだったのか」 タヌキ「……………それだけッスか?」 北斗丸「えっ?」 タヌキ「オイラたちのこと、かわいそうだと思うでしょ? 助けてあげたいな−とか、思いません?」 法輪「ええい!なんなんじゃ、そのジトッとした上目づかいは」 タヌキ「うったえかけてるつもりなんスけど………かわいくないですか?」 阿古耶「ぜんぜん、かわいくはないけど……ちょっと、かわいそうかも。 北斗丸、助けてあげようよ」 タヌキ「そうッスよ」 北斗丸「う−ん………まあ、いいか」 タヌキ「やった−−−!!」 タヌキ「それじゃあ、四国まであんないするッス」 タヌキ「さあ、のってください」 阿古耶「生あたたかくて、気持ち悪い………」 タヌキ「じゃあ、出発しま−ッス」 タヌキ「はい、とうちゃ−く」 阿古耶「これから、どうすんの?」 タヌキ「キツネの住みかは、オイラにもわからないッス。 でも、あいつらは悪さをするのが大好きッスから、 きっと人間の町にいるはずッス。行ってみましょう」 タヌキが仲間になった! タヌキ「はい、とうちゃ−く」 北斗丸「おまえ、あのときのタヌキだな!」 タヌキ「わっ、びっくり!」 法輪「びっくり、じゃないわい!よくも、だましたな」 タヌキ「ああ、ごめんなさい。強い人間を、探してたんス」 阿古耶「どういうことよ?」 タヌキ「話してもいいけど、どうせムダだと思うッス。 あんたたち、オイラに勝てなかったじゃないスか。もっと、強い人間じゃなきゃ」 法輪「なまいきなタヌキじゃなあ」タ ヌキ「でも、いくら待っても、強い人間はあらわれないし……… このさい、あんたたちにたのんじゃおうかな」 北斗丸「なにをだい?」 北斗丸「なんだ、この音は?」 頼遠「見ろ、海の中に、なにかいる!」 ぬれ女「オ−ホホホ!生き血をちょうだ−−−い!」 ぬれ女が、おそってきた! ぬれ女「ああ、おなかいっぱい。ごちそうさま……… いっておきますけど、ふつうの人間には、あたくしをたおすのはムリよ。オ−ホホホ!」 北斗丸「うう………ひどい目にあった」 頼遠「ふつうの人間には、たおせない……っていってたな。なにか、手をかんがえないと」 ぬれ女「ギャアアア−−−ッ!あ……あたくしが、まけるなんてぇぇ−−−!」 北斗丸「うわっ、じしんか?」 阿古耶「見て!うずが消えて、岩が!」 法輪「ほう、ずっとつづいておるな。上をわたって行けそうじゃぞ」 ぬれ女「オ−ホホホ、うれしいわ、また来てくれたのね!さあ、血をちょうだ−−−い!」 ぬれ女が、おそってきた! |