女「京の南の森にきれいなとりがおりていくのを見たよ」 女「この村のお寺には、だいこくさまっていう、ほとけさまがいるのよ」 女「だいこくさま、見つけた?お寺の中じゃないわよ」 女「まだ、わからないの?おはかとか、見てみたら?」 女「だいこくさま、見つけたんだね」 頼遠「なんだ!?きゅうに、くもゆきがあやしくなったぞ?」 だいこく「わしの名は、だいこく。あんこくの力を持つもの。 なぜ、わしのねむりをじゃまする?」 頼遠「あなたのお力をおかりしたいのです」 北斗丸「苦しんでいる、おおくの人たちのためにも、おねがいします!」 だいこく「ほほう?おまえたち、わしがこわくないのか。 きものすわったやつらだ。気に入ったぞ………よし、力をかしてやろう」 頼遠は『だいこく』をおろせるようになった! さんざぶろう「おれは、このくにでいちばんつよいのぶしだぜ そこのぶきやでうっている『しちせいけん』をくれるならなかまになってやろう」 仲間にしますか? さんざぶろう「ふ−む……それもよかろう」 さんざぶろう「うでがなるわい」 さんざぶろうが仲間になった! さんざぶろう「仲間がいっぱいのようじゃ。 オレはもうしばらくここにとどまるとしよう」 さんざぶろう「なんだ?『しちせいけん』を、もってないではないか! オレをたぶらかすつもりか!!」 阿古耶「………あれ?」 北斗丸「どうしたんだ、阿古耶?」 阿古耶「うん………なんだか、あたしこの村を知ってるような気がする」 法輪「気のせいじゃないのかね。こういう村は、いくらでもあるでな」 阿古耶「そうかなあ……」 阿古耶「ねえ、北斗丸………やっぱりあたし、この村がなつかしいような気がするよ」 北斗丸「本当かい?どういうことなんだろう」 阿古耶「それは、わからないけど………」 ごすけ「ちょっと、あんたたち。家の前で、さわがないでくれます?」 北斗丸「あ、ごめんなさい」 ごすけ「こまるんだよね、もうすぐあかんぼうが生まれるってのにさ」 あかんぼう「オギャア!オギャア!」 ごすけ「おっと、いってるそばから、生まれたらしいな」 ごすけ「それじゃあ、静かにしてくれよ」 ごすけ「な、なんだ?」 北斗丸「家の中からだ!」 ごすけ「し、しまった……おくさまぁ−−−!」 北斗丸「オレたちも、行ってみよう!」 ごすけ「ああっ!だんなさま、おくさま!」 ちょうじゃ「うう………あ、あかんぼうを………」 ごすけ「おまえ、なにものだ!その子を返せ!」 ぼりょう「いやよ。そこをおどき!」 北斗丸「あぶない!」 ぼりょうが、おそってきた! ぼりょう「覚えておいで!あたしは、あきらめないよ。ぜったい、この子をうばってやる」 ごすけ「よかった、あかちゃんはぶじです!」 ちょうじゃ「そ、そうか………よかった」 ちょうじゃ「どなたか知りませんが、ありがとうございました」 ごすけ「あっ!そういえば、あんたら勝手に入ってこないでよ」 北斗丸「ごめんなさい。オレ、北斗丸といいます。 この家で、ただならぬ気配がしたもので………」 ちょうじゃ「ごすけ、いいのだ。 この人たちのおかげで、あかんぼうがぶじだったのだからな………」 法輪「そんなことより、あれはぼりょうという妖怪じゃ。 死ぬときに、この世にみれんをのこしたものが、ぼりょうになることがあると聞くが…… やつは、どうやら子どもにみれんがあるらしいのう。 なにか、心当たりはありませんかな?」 ちょうじゃ「そんな、心当たりなど……」 おなみ「わ……わたしには、あります………」 ちょうじゃ「おなみ!」 おなみ「妖怪になっていたけれど、あれは……わたしのねえさんの、おたつです」 ちょうじゃ「なんだって!?あの、十五年前になくなったという……?」 おなみ「ええ………おたつねえさんは、あかちゃんをうんで死にました。 わたしは、まだこどもだったから、よく知らないけれど………… あかちゃんは、どこかへもらわれていったそうです……… ねえさんは、きっとそれをうらんで………」 ちょうじゃ「バ、バカをいうんじゃない! おまえがうらまれることじゃないじゃないか」 ごすけ「そうですよ、お気をたしかに」 ぼりょう「いいえ、おなみのいう通りよ」 あかんぼう「オギャアッ!」 ごすけ「あっ、なにをする!?」 ぼりょう「フッフッフ……この女の体をかりて、 あかんぼうに、ぎゃく鬼ののろいをかけたのよ。 このままだと、ねむりつづけて死ぬわ」 北斗丸「しまった、いつのまに!」 おなみ「ね、ねえさん……どうして、こんなことをするの? おねがいだから、のろいをといてちょうだい」 ぼりょう「………いやよ。あたしだって、あかんぼうをうばわれたんだ……… でも、どうしてもというなら、じょうけんがあるわ」 ちょうじゃ「なんだ、なんでも聞いてやるぞ」 ぼりょう「あたしのあかんぼうをここに連れてきて。 元気にそだったすがたを見せてくれたら、ぎゃく鬼を取りのぞいてあげる」 ごすけ「そ、そんなこと、ムリですよ」 ぼりょう「なら、あかんぼうは死ぬわ。いいわね、かならず連れてくるのよ」 女「あ、あら?あたし、どうしてたんだろう……… へんな妖怪が、あらわれたとこまでは覚えてるんだけど」 頼遠「………どうやら、ぼりょうは帰ったらしいな」 おなみ「ああ、どうしましょう。あかちゃん………わたしのあかちゃんが………」 ちょうじゃ「北斗丸さんでしたね。 どうか、あのぼりょうのこどもを探してください。 おれいは、できるだけのことをしますから」 ごすけ「わたしからも、おねがいします」 頼遠「どうする、北斗丸?」 引き受けますか? 北斗丸「悪いけど………そんな、くもをつかむような話、引き受けられないよ」 法輪「そうじゃな」 阿古耶「待って、みんな!あたし、引き受けたい……… なんだかどうしても、引き受けなくちゃいけない気がするんだ。おねがいだよ!」 頼遠「どうする、北斗丸?」 引き受けますか? 北斗丸「わかりました、やってみます。なにか、手がかりはありませんか?」 おなみ「ええ………たしか、おたつねえさんのこどもは、 こてつという人にあずけた……と、死んだ母がいっていました」 ちょうじゃ「こてつは、この村のやどやにえものをおろしにくるりょうしです」 北斗丸「その人に聞けば、おたつさんのこどものゆくえが、 わかるかもしれないな。行ってみよう」 阿古耶「おねがいだよ、引き受けようよ」 頼遠「どうする、北斗丸?」 引き受けますか? こてつ「なんかようか?」 北斗丸「すいません。ここに、こてつさんという人はいませんか?」 こてつ「こてつは、わしだよ。なんだね、おまえさんたちは」 北斗丸「オレたち、十五年前になくなったおたつさんのこどもを探しているんです。 あなたなら、なにか知ってると思って」 こてつ「ほほう、おたつさんのこども? たしかに、あの子をあずかったのはわしだがね。 わしは、あわじ村のそうへいさんのところへ連れていって、それっきりだからな」 阿古耶「あわじ村の、そうへいさんですね」 こてつ「うん、そうだ。 京に連れていってこどもをほしがってる金持ちにゆずるって、いってたよ。 かわいい女の子だったから、今ごろはみやこのお姫さまになってるんじゃないかな」 阿古耶「北斗丸、あわじ村に行ってみよう!」 北斗丸「う、うん………ありがとうございました」 こてつ「まあ、がんばれや」 こてつ「おたつさんのこどもは、見つかったかい?」 こてつ「おたつさんは、気のどくだったねぇ」 |