げん「ぬらりひょんは、ゆるせないヤツだ。がんばれよ、ねえちゃん」 くろ「るすは、オレたちにまかせとけって」 さぶ「ゆうかねえちゃんのかたき、きっととってくれよ」 まさ「オイラたち、がんばっているよ。心配いらないよ」 さくら「さくら、なかないで、まってるよ。だから、早く帰ってきてね」 法輪「こら、わしの話を、ちゃんと聞いとらんかったのか!? あの鏡を、じっくり見させてくれい」 ゆうか「おはなし!ジャマよ」 まさ「あの人たちは、いい人なんだってば! お金を返してあげてよ、ゆうかねえちゃん」 まさ「うわっ」 ゆうか「金を返せ?なにいってんだい! そんなことしたら、今日はなにも食べられないんだよ」 まさ「で、でも……」 ゆうか「それに、金を返したって、どうせつかまるんだ! だったら、にげてやるわよ。まさ、ジャマすると、あんたでもゆるさないよ!」 阿古耶「ゆうか!だいじょうぶだよ、つかまえたりしないってさ!」 ゆうか「信じられるもんか!信じたって、うらぎられるのがオチさ!」 北斗丸「本当です!役人のところなんて行きませんから!」 ゆうか「あたしたちはね、実の親にすてられたんだよ。 もう、この世で信じられるもんなんてなにもないんだ!」 なぞの声「気に入ったよ、そのたましい…………」 北斗丸「なんだ、この声は?」 頼遠「だれだ?すがたを見せろ!」 ぬらりひょん「あたしの名は、ぬらりひょん。 だれも信じられないという、そのむすめのたましいが、気に入った…… わがあるじの、配下におなり」 ゆうか「な、なんですって?や、やめて−−−!」 百々目鬼「ギャアア−−−!!」 北斗丸「ああっ!ゆうかさんが妖怪に!?」 まさ「ゆ、ゆうかねえちゃ−−−ん!」 ぬらりひょん「よ−し、百々目鬼よ。そいつらを食い殺すんだ」 阿古耶「そんなまさか……ゆうか!」 まさ「ゆうかねえちゃん、オイラがわからないのか!?」 百々目鬼「ガア−−−ッ!」 阿古耶「やめて、ゆうか−−−!」 ぬらりひょん「ムダだよ。悪しきたましいを持ち妖怪に変えられた人間は、 すべてのきおくをなくしてしまうからね。おまえたちのことも、わかりゃしないさ」 阿古耶「そ、そんな……」 百々目鬼「ガア−−−ッ!」 まさ「う、うわあ−−−っ!」 北斗丸「あぶない!」 阿古耶「ゆ……ゆうか−−−!」 げん「ゆうかねえちゃ−−ん!」 ぬらりひょん「なにっ!?百々目鬼が倒されるとは……… ウ−ム、あたしとしたことが、けいさんちがいだ。出なおすとしよう」 ゆうか「うう……み、みんな……」 まさ「ゆうかねえちゃん!」 ゆうか「ごめんね、まさ……ケガはない?」 まさ「平気だい」 ゆうか「よかった………」 北斗丸「ゆうかさん、オレたち……」 ゆうか「……北斗丸っていったね………まさたちを守ってくれて、ありがとう………」 阿古耶「ゆうか、しっかりしてよ!」ゆ うか「……あたしはもうダメ……みんなをたのむわ、阿古耶……信じてるからね……」 げん「ゆうかねえちゃん!」 阿古耶「ゆうか−−−!」 まさ「ゆうかねえちゃ−ん!」 法輪「あの、ぬらりひょんとやらなんとむごいことを………」 阿古耶「……これ、返してもいいわ。あんたたちから、スリとったお金よ」 北斗丸「あ、ありがとう………いいのかい?」 阿古耶「うん。そのかわり、たのみがあるんだ」 頼遠「たのみ?」 阿古耶「そうよ。きいてもらえるんなら、あの鏡もあげる」 法輪「なんと、『やたのかがみ』をか!?よしよし、きくとも!」 頼遠「いや、待て。おまえのたのみとは、かたきうちではないのか?」 阿古耶「そうよ。ゆうかを、こんな目にあわせたヤツをあたしはゆるさない! かたきをうちたいのよ、てつだって!」 法輪「な、なに……かたきとな?しかしなあ……」 阿古耶「おねがいよ!こんなことたのめるの、あんたたちしかいないんだ」 頼遠「どうする、北斗丸?」 北斗丸「…キミの気持ちは、よくわかるよ。いっしょに行こう!」 阿古耶「あ……ありがとう、恩にきるよ!」 阿古耶が、仲間になった! 阿古耶「げん、鏡を持ってきな」 げん「おう!」 阿古耶「さあ、やくそく通り、鏡をあげるよ。 お金といっしょに受け取って、北斗丸」 北斗丸「ありがとう」 お金を、取りもどした! 『三種の神器』のひとつ、『やたのかがみ』を手に入れた! 阿古耶「この町の北に、くらま山って山があるんだ。 妖怪が住んでるってウワサだから、きっとさっきのヤツもそこにいると思う」 北斗丸「わかった。じゃあ、あしたさっそく、そこへ行こう」 阿古耶「みんな、元気でね。あたしがいなくても、しっかりやるんだよ?」 まさ「うん!」 さぶ「だいじょうぶさ」 くろ「ねえちゃんも、がんばってね」 さくら「さくら、いいこで待ってる」 げん「オレたち、ここで力をあわせてがんばっていくよ! ゆうかねえちゃんのかたきを、きっと、取ってくれよ」 阿古耶「まかしといて!」 法輪「や、やっぱり!!」 頼遠「どうしたっていうんだ?」 法輪「二人とも、おどろくなよ……… この鏡こそが、『三種の神器』のひとつ、『やたのかがみ』じゃ」 北斗丸「な、なんだって!?」 頼遠「たしかなのか?」 法輪「もちろんじゃ!わしは、むかしこの目で、『三種の神器』を見たことがあるんじゃ。 この形、このうつくしさ……まちがいないわい」 北斗丸「でも、なんで、こんなところに?」 法輪「それなんじゃが……まさ、この鏡は、どこで手に入れたんじゃね?」 まさ「え………こないだ、阿古耶ねえちゃんが……」 げんの声「あっ、ね、ねえちゃん!ず……ずいぶん早いじゃないか!」 阿古耶の声「なにを、あわててんだい。ほら、そこをおどき」 まさ「ど、どうしよう……阿古耶ねえちゃんの声だ!帰ってきちゃったんだ」 まさ「あ……阿古耶ねえちゃん、ゆうかねえちゃん……」 阿古耶「だれだい、そいつら!」 ゆうか「勝手に、鏡なんか見せて! 知らないヤツを、信用しちゃダメだっていってるだろ」 まさ「ご、ごめんなさい。 でも、この人たち、いじめられてたオイラを助けてくれたんだ。 だから、おれいに宝ものを見せてあげようと思って……」 げん「まさを、おこらないでよ!オレがいいっていったんだ」 阿古耶「……ったく、しょうがないね。でもまあ、ありがとね。あんた、名前は?」 北斗丸「あ……北斗丸です」 頼遠「そんなことより、この鏡はどうしたんだ?」 ゆうか「あんたたちには、かんけいないでしょ!」 法輪「そうは、いかん。この鏡は、大切なものでな。 わしらは、これを探していたのじゃが…… おまえさん、これをどこかで、ぬすんだんじゃないかね?」 阿古耶「……だったら、どうだっていうのさ! いっとくけど、いったん手に入れたえものを、手ばなす気はないからね」 ゆうか「その通りよ。さあ、いたい目に会いたくなかったらとっとと帰りな!」 さくら「ゆうかねえちゃん!」 ゆうか「さくら、まさ、知らないヤツを、うちに入れたりしちゃダメだよ。 他人なんて、信用できないんだから」 法輪「これこれ、小さな子に人を信じるな……なんて教えちゃいかんなあ」 ゆうか「フン。だまされるよりマシさ」 頼遠「……ん?おまえ、どこかで見た顔だな」 北斗丸「えっ?」 ゆうか「あら、ごめんなさいね」 北斗丸「あ−−−っ!あのときのスリだ!」 法輪「なんじゃと、こいつが?つかまえて役人につき出してやる!」 ゆうか「チッ、しまった!」 阿古耶「ゆうか!」 さぶ「ゆうかねえちゃん!」 阿古耶「ここにいるのは、みんな親にすてられたこどもたちなんだ。 あたしたちは、みんなにごはんを食べさせるために、 スリやドロボウをしてかせいでるの。悪いことだってのは、わかってるけど……」 北斗丸「そうだったのか……」 法輪「なかせる話じゃのう。わかった、役人につき出したりなんかしないぞ」 阿古耶「……ありがとう」 法輪「うむ、これぞまさしく『やたのかがみ』じゃ」 まさ「この鏡は、オイラたちの宝ものなんだ。阿古耶ねえちゃんが持ってきたんだよ」 阿古耶「あんたたち、いい人だね」 |