セリフ 29





阿古耶「わあ、大きなたき。それに、きれいな水だね。
ちょっと、水あびしちゃおうかな」
北斗丸「ダメだよ。こんなところでそうびをぬいだら、妖怪におそわれたとき大変だぞ」
法輪「北斗丸………おまえさん、ほんっと−−−にマジメでつまらんヤツじゃのう」
北斗丸「たまおり姫が引きずりこまれたとどろのたきっていうのは、ここだな」
阿古耶「こんなにきれいな水なのに、妖怪が住んでいるなんて……」
頼遠「二人とも、そんなにのぞきこんじゃ、あぶないぞ」
北斗丸「な、なんだ!?」
法輪「おおっ、す、水上を見てみるんじゃ!」
ヌシ「わたしの住みかでさわいでいるのは、だれじゃ?」
阿古耶「出たわね、妖怪!」
北斗丸「オレたちは、おまえにさらわれたたまおり姫を、助けに来たんだ!
おとなしく、姫を返せ!」
ヌシ「いやじゃ。姫は返さぬ」
北斗丸「それなら、戦って取りもどす。かくごしろ!」
ヌシ「なまいきな!」


ヌシ「む、むねんじゃ……」
北斗丸「さあ、たまおり姫を返せ!」
たまおり姫「待ってください!」
たまおり姫「ヌシさまを、いじめないでください」
火鷹「あんた、なにものだ?」
頼遠「あなたの、そのかっこう………さぞ、名のある姫ぎみと見受けるが?」
たまおり姫「わたくしは、たまおり姫。
あなたがたは、わたしの父に頼まれて来た方たちでしょう」
北斗丸「そうです。おとうさんはとても、心配していましたよ」
たまおり姫「そうですか………ありがとうございます。でも、わたくしは帰りません」
阿古耶「ど、どうして!?」
たまおり姫「それは………ヌシさまをあいしてしまったからです。
はじめはこわかったけれど、ヌシさまは、とてもやさしくしてくれました。
わたくしは、ヌシさまのそばをはなれたくありません。
父たちに、そう伝えてください」
法輪「こりゃあ、たまげたわい」
北斗丸「こ、こんなことになってるなんて……」
ヌシ「わたしも、たまおり姫をあいしておる。
どうか、わたしたちを引きはなさないでほしい」
頼遠「どうする、北斗丸?」
たまおり姫を、連れて帰りますか?



北斗丸「……やっぱり、好きあっているものを引きさくのは、よくないことだと思うよ」
たまおり姫「そ、それじゃあ?」
北斗丸「おとうさんたちにはオレから、いっておきます………二人で、おしあわせに」
阿古耶「さすが、北斗丸!」
火鷹「フッ……ガキのくせに、なかなかシャレたまね、するじゃねえか。
ガチガチ頭の頼遠よりも、ずっとイキだぜ」
ヌシ「ありがとう。おれいに、そなたたちを元気にしてやろう」
みんなは、元気になった!
たまおり姫「わたくしからは、これを……」
たまおり姫「これは、わたくしのかんざしです。
これを母にわたして、わたくしは元気ですと伝えてください」
北斗丸「はい、わかりました」
『きんのかんざし』を、手に入れた!
ヌシ「では、元気でな。そなたたちのことはわすれないぞ」
たまおり姫「ありがとうございました」



北斗丸「……でも、姫を連れて帰るってやくそくしたんだ」
たまおり姫「そ、そんな……」
法輪「ウム、妖怪といっしょになっても、しあわせになれるとは、かぎらんからのう」
たまおり姫「ああ、ヌシさま……」
ヌシ「姫よ……………わたしでは、かれらに勝てぬ。
かれらが、そなたを連れていくというのなら、それをとめることは、できないのだ」
阿古耶「なんだか、かわいそうみたい」
頼遠「しょうがないさ。妖怪と人間では、住む世界がちがうんだ」
北斗丸「たまおり姫、さあ、こちらへ」
たまおり姫「…………」
ヌシ「姫………元気でな」
たまおり姫「ヌシさま、今度生まれかわったら…………そのときは、かならず……」
阿古耶「本当に、これでよかったの?」
北斗丸「しょうがないじゃないか。さあ、帰ろう」
北斗丸「たきのヌシさんたち、元気かな」
阿古耶「たきのヌシには、悪いことをしたね」



北斗丸「あっ、あれは!?」
頼遠「大ガマだ!あんなヤツが、家の地下に、かくれていたなんて」
法輪「そういえば、ゆか下に大ガマが住みつくと、生気をぬかれる………と聞いたことがあるわい」
北斗丸「あっ、火の玉を食べたぞ!あれは、おばあさんから出た火の玉だ」
頼遠「きっと、あの火の玉は、おばあさんの生気なんだな。
それを食べられたからびょうきになったんだろう」
北斗丸「なんてヤツだ、ゆるせない!」
大ガマに、おそいかかった!
北斗丸「大ガマもやっつけたし、帰ろう」