阿古耶「やだ、気持ち悪い」 法輪「このあたりでは、むかし平家の人間が、たくさん死んだそうな。 そのぼうれいかもしれんのう」 阿古耶「ウソッ、やだっ!北斗丸、帰ろうよ−−−!」 阿古耶「こんなとこ、やだってば!あんた、いやがらせしてんの!?」 北斗丸「なんだ?あそこに、光が見えるぞ!」 法輪「ウ−ム……あれが、もんだいの光じゃな。 たしかに、よく見ると火の玉とは、ちがうのう」 北斗丸「やっぱり、おじいさんのいう通りあの光は『くさなぎのつるぎ』なんだ」 頼遠「しかし………どうやって、それをたしかめる?」 北斗丸「それは………」 阿古耶「あたしが、もぐってやるよ」 北斗丸「ええっ、でも………」 阿古耶「だいじょうぶ!火の玉じゃないなら、こわくないもん。 あたし、これでもおよぎはとくいなんだよ」 法輪「そんじゃ、たのむかのう」 頼遠「だが、むりはするなよ」 阿古耶「まかせて!」 阿古耶「この光、下の方からのびてるんだ…… ようし、もぐってみ…………キャアッ!?」 阿古耶「キャ−−−ッ!」 北斗丸「阿古耶!?どうしたんだ!」 阿古耶「あ、あし……あしが………ゴボッ」 法輪「たいへんじゃ!おぼれておる」 頼遠「助けに行くぞ!」 北斗丸「だいじょうぶか、阿古耶!」 阿古耶「ダ、ダメ……来ないで、北斗丸!ここには、だれかがいるわ!」 北斗丸「なんだって!?」 ぼうれい「もう、おそい………」 ぼうれい「なにものだ………われらのねむりをさますやつ………」 ぼうれい「おお、見よ………こやつらは、源氏のものではないか………」 ぼうれい「つかまえたぞ………これで、うらみがはらせるのだ………」 法輪「おまえら、平家のぼうれいじゃな!」 ぼうれい「そうだ………そいつら源氏に殺され、だんのうらにしずんだのだ………」 頼遠「それは、さかうらみだ! オレはともかく、北斗丸は、まだ生まれてもいなかったんだぞ! 阿古耶たちにだって、かんけいない!」 ぼうれい「そんなことは、かんけいない……… 源氏の仲間はすべて、われらの敵だ………」 北斗丸「う、うわ−−−!」 アメノミカゲ「ウワ−ッハハハ!まんまと、引っかかりおって」 火鷹「てめえは、アメノミカゲ!」 アメノミカゲ「そうだとも。せっかく会えたのに、またお別れだな。 『天下五剣』の力でめざめたぼうれいたちに、あの世に連れて行ってもらうがいい!」 頼遠「また、だましたんだな!!」 アメノミカゲ「だまされるおまえらが、バカなのだ。 たくさんの仲間のうらみ、今こそ思い知れ!」 北斗丸「ど……どうして、そこまで源氏をにくむんだ?」 アメノミカゲ「源氏が、われらをねらう鬼追うものだからだ だが、くわしいことを話す時間はなさそうだな。さよならだ、しょくん」 ぼうれい「さあ、行こう………あの世へ………」 北斗丸「うわあ−−−っ!!」 アメノミカゲ「……これでいい。 鬼追うものさえいなくなれば、われわれ妖怪は平和にくらせるのだ………」 北斗丸「……う、う−ん」 北斗丸「みんな!だいじょうぶか?」 阿古耶「こ……ここはどこなの?」 頼遠「たしかオレたちは、ぼうれいどもに海に引きずりこまれたはずだが………」 法輪「ここは………黄泉の国じゃ。 わしらは、どうやら死んじまったようじゃのう」 火鷹「なんだと?たしかなのか!?」 法輪「坊主がいうんじゃぞ。信じんかい」 阿古耶「……ってことは、あたしたち死んじゃったの!?」 北斗丸「とにかく、このあたりをあるいてみよう」 頼遠「そうだな。わけを話して頼めば、元の世界にもどしてくれるかもしれん」 阿古耶「うん……あっ!?みんなが、いなくなってる!?」 北斗丸「本当だ。どこかべつのばしょにとばされたのかなぁ?」 法輪「いっしょに旅してきた仲間じゃ。ぶじでいると、いいのじゃが……」 つれていた、すべての仲間がはずれた! |