大てんぐ「こんなところまで、人間ふぜいがなにをしに来た?」 法輪「そういうところを見ると、おぬし妖怪じゃな」 阿古耶「ぬらりひょんってヤツは、どこにいるの!?」 大てんぐ「なに、ぬらりひょんだと!?ヤツは、妖怪迷宮にいるはずだが」 北斗丸「妖怪迷宮?それは、どこにあるんですか?」 大てんぐ「なぜ、そんなことを知りたがる?あやしいヤツめ」 北斗丸「あ……これには、わけが……」 大てんぐ「やかましい!今すぐ立ちさればよし、 そうでなければ力ずくでも追い出してやるぞ!どうだ、わしのあいてになるか!?」 北斗丸「人のいうことも聞かないで、勝手な人だな!わかりました、戦います!」 大てんぐ「よし、行くぞ!」 大てんぐ「ま、まいった!!」 阿古耶「やった−−−!」 大てんぐ「やくそく通り、ほうびをやるぞ。受け取れ」 『うしわかのよろい』を、もらった! 大てんぐ「……ところで、そこの少年、名はなんという?」 北斗丸「北斗丸です」 大てんぐ「北斗丸………すがたといい、戦いぶりといい、にている………おぬし、両親は?」 北斗丸「いません。オレ、あかんぼうのころに 鎌倉のゆいがはまにすてられてたのを、この頼遠にひろわれたんです」 大てんぐ「そ、そうすると、まさか本当に、あの方のこどもなのか…………?」 頼遠「なんだって!あんた、北斗丸の親を知っているのか!?」 大てんぐ「ウム、いや………」 北斗丸「知っているなら、教えてください!」 大てんぐ「……実のところ、わしも自信がないのだ。 あの方のこどもにしては、なにか、ものたりないような………」 阿古耶「なによ、それ!もったいつけてないで、早く教えなよ」 大てんぐ「いや……やはり、しょうこが出るまでは、いえぬ」 阿古耶「ケチ!」 北斗丸「どうすれば、教えてくれるんですか?」 大てんぐ「ウ−ム、本当に知りたいのなら、ひだのリョウメンスクナをたずねよ。 もし、おぬしにかくされた力があれば、スクナが見ぬいてくれるはずだ。 いいわすれたが、わしは大てんぐ。またの名をくらまのてんぐという。 わしに教えられたといえば、わかるはずだ」 北斗丸「……わかりました。ひだのリョウメンスクナですね」 大てんぐ「ウム。くらい山という山が、ヤツの住みかだ」 頼遠「よし、行こうぜ」 法輪「ほいほい」 阿古耶「もちろんよ」 北斗丸「みんな……ありがとう」 大てんぐ「ああ、そうだ。ちょっと待て、とものものをつけてやろう」 北斗丸「とものもの?」 大てんぐ「うお−−−い!!コノハ!グヒン!」 コノハ「は−−−イ」 グヒン「は−−−イ」 大てんぐ「おまえたち、この人間のともをして、 リョウメンスクナのところへ連れていってやれ。 ほれ、あいさつせんか」 コノハ「こっちはコノハ、そっちはグヒン」 グヒン「こっちはグヒン、そっちはコノハ」 法輪「ほう、かわいい小てんぐじゃのう」 阿古耶「本当!」 コノハ「ダメ、かわいくナイ」 グヒン「かわいくナイ、かっこイイ」 北斗丸「ごめん、ごめん。よろしく、オレは北斗丸」 コノハ「ゆるス。よろしくナ」 グヒン「よろしくナ。北斗丸」 大てんぐ「こう見えても、てんぐのはしくれだ。 力になってくれるだろう。それから、ケガを治しておいてやろう。 スクナに会ったら、すぐにまたもどって来るのだぞ。くれぐれも、気をつけてな」 みんなは、元気になった! 大てんぐ「おお、しゅぎょうをつんできたか。戦うかね?」 戦いますか? 北斗丸「いいえ………えんりょします」 大てんぐ「リョウメンスクナには会ったか? くらい山は、おおがき村の北の山じゃ。がんばるのだぞ」 大てんぐ「よわい、よわい!まだまだだな。 しかし、なかなか見どころのあるヤツだ。気に入ったぞ。 しゅぎょうをつんで、また来るがいい。わしに勝ったら、ほうびをやるぞ」 大てんぐ「よわい、よわい!まだまだだな。しゅぎょうをつんで、また来るがいい。」 コノハ「ただイマ−−−!」 グヒン「ただイマ−−−!」 大てんぐ「お帰りなさいませ、北斗丸さま」 北斗丸「ど、どうしたんですか?大てんぐさん」 大てんぐ「大きな力が、山をのぼって来るのを感じました。 リョウメンスクナに会って、力を開放してもらったのですね。 やっぱり、わしの目にまちがいはなかった」 頼遠「じゃあ、北斗丸の親を教えてくれるな?」 大てんぐ「ああ、もちろん…………北斗丸さま、わしの本当の名は弁慶ともうします。 そして、あなたのお父上は、わしの主人の源義経さまでございます!」 北斗丸「なんだって!?」 法輪「北斗丸が、義経のこどもじゃと!?」 弁慶「そうです。力が開放されたので、よくわかります。 義経さまの小さいころにそっくりですよ。 生まれてすぐ、頼朝によってゆいがはまに、すてられたと聞きましたが…… まさか生きていらっしゃるとは……」 北斗丸「オレが……義経のこども………」 頼遠「そんなバカな!」 阿古耶「北斗丸、おどろいたろうね。 倒そうとしてるあいてが、実のお父さんだったなんてさ………」 法輪「ウム。今、弁慶どのが話をしているが……… 強がっていても、まだこどもじゃからなあ」 頼遠「…………」 阿古耶「やだ、なにショボくれてんのよ!頼遠」 法輪「これこれ、阿古耶。頼遠の身にもなってみい。 兄弟のようにそだってきた北斗丸が、自分の父親の敵のみうちだったんじゃぞ……… そりゃあ、ショボくれたくもなるわい」 頼遠「……それだけじゃない。 知らなかったとはいえ、オレは北斗丸に自分の父を殺させようとしたんだ」 阿古耶「しょうがないじゃない。義経ってヤツのせいで、みんながこまってんだもん」 法輪「おまえがいうと、なんだかえらくカンタンじゃな……」 阿古耶「それに頼遠だって、頼遠のおとっつぁんに頼まれたんでしょ。 あんたが悪いんじゃないと思うな」 頼遠「しかし……」 阿古耶「んもう、男のクセにグダグダいうんじゃないよ! 一番つらいのは、北斗丸なんだよ」 法輪「うひょっ、キツイむすめじゃなあ」 阿古耶「あんた、北斗丸のアニキ分なんでしょ? だったら、もっとしっかりして北斗丸のささえになってやりなよ!」 頼遠「あ、阿古耶………」 阿古耶「なによ!」 法輪「キツイいい方じゃが、阿古耶のいう通りじゃぞ」 頼遠「……そうだな、オレまでしずんでいても、しょうがないよな。 ありがとう、阿古耶」 阿古耶「えっ…………や、やだな−、おれいなんて……ヘンなの。てれるじゃない、バカ!」 法輪「しかし、気になることがあるんじゃ」 阿古耶「なに?法輪さん」 法輪「ウム………敵が自分の父と知った今、 北斗丸は、この旅をつづけられるのじゃろうか……?」 阿古耶「そ、それは………だ、だいじょうぶよ、北斗丸なら!」 法輪「……だと、いいんじゃが……」 頼遠「…………」 弁慶「それにしても、義経さまににてらっしゃる。 義経さまともこのくらま山でしゅぎょう中にこうして、よく話をしたものです」 北斗丸「…………」 弁慶「義経さまは、とてもやさしい方でしたよ。 わしら妖怪を、人間と同じようにあつかってくれました……… わしらはみんな、義経さまが大好きでした………」 北斗丸「そんな人が、どうして妖怪を使って、人々を苦しめようとするんですか?」 弁慶「……それは、きっとごかいです。 義経さまは、そんなことをする方ではありません」 北斗丸「でも、頼朝さまが見たって……」 弁慶「頼朝が見たといっても北斗丸さまは、自分で見ていないんでしょう?」 北斗丸「それは、そうですけど…………」 弁慶「北斗丸さま、頼朝を信用してはいけません。 自分のために、命をかけて戦った義経さまを、うらぎって殺したヤツなのですから………」 北斗丸「えっ、でも………なんだか、頭がこんらんしてきました…… オレは、どうしたらいいんだろう?」 弁慶「北斗丸さま、わしは旅をやめろとはいいません。 むしろ、旅をつづけて、義経さまを追いかけてほしいのです。 そうして、本当の義経さまはどういう人なのか…………… 北斗丸さまの目で、たしかめてください」 北斗丸「…………」 弁慶「さあ、今日はもうおそい。みんなのところにもどって、やすみましょうか」 法輪「ア−、北斗丸よ。え−、これから……あのう、どうするかね?」 北斗丸「えっ」 法輪「ア−、ウ−………いや、おまえさんが旅をやめたいというんなら、 え−………わしらは別に………」 阿古耶「ちょっと、法輪さん! なにを、よわきになってんのよ……いっしょに行くよね、北斗丸!」 北斗丸「……ああ、もちろん。『三種の神器』のさいごのひとつ、 『くさなぎのつるぎ』を探さなくちゃ」 阿古耶「じゃあ、旅をつづけるんだね!?」 北斗丸「あたりまえじゃないか」 阿古耶「ほ−ら、だからいったろ?北斗丸は、きっとだいじょうぶだって」 法輪「よかった、よかったわい。のう、頼遠」 頼遠「ああ……」 北斗丸「みんな……心配かけて、ごめん」 弁慶「北斗丸さま……」 北斗丸「オレ、旅をつづけます。 『くさなぎのつるぎ』を探しながら義経の手がかりをあつめていきます。 頼朝さまのいう通り、義経が神器をねらっているなら、その方がかくじつだし………」 弁慶「それなら、いわみの国へ行きなされ。 『くさなぎのつるぎ』は、いわみのタタラ神社にあると、聞いたことがあります。 神社につうじるはしがこわれていたので、すぐなおしておきます」 北斗丸「あ、ありがとう、弁慶さん!行ってみます」 北斗丸「よし、出発だ!」 コノハ「元気でナ、北斗丸!」 グヒン「北斗丸、がんバレ!」 弁慶「ケガを治してさしあげましょう」 みんなは、元気になった! コノハ「元気でナ、北斗丸!」 グヒン「北斗丸、がんバレ!」 スクナ「『天下五剣』は、見つけたじゃあ? えぞ、つがる、いわみ、とさ、ぶんごじゃあ」 |